Titre : |
死の歴史学 : ミシュレ『フランス史』を読む |
Type de document : |
texte imprimé |
Auteurs : |
真野倫平 (1965-), Auteur |
Editeur : |
東京 : 藤原書店 |
Année de publication : |
2008 |
Collection : |
南山大学学術叢書, ISSN 192002204800 |
Importance : |
532 p. |
Présentation : |
couv. ill. en coul. |
Format : |
20 cm |
ISBN/ISSN/EAN : |
978-4-89434-613-0 |
Note générale : |
bibliogr., index |
Langues : |
Japonais (jpn) |
Mots-clés : |
Michelet, Jules (1798-1874) |
Résumé : |
【歴史の肉体に触れる】
本書は、ジュール・ミシュレ(1798--1874)の『フランス史』を死の物語を通して読もうとする試みである。
ヨーロッパ文明において特別に重要な死の物語がふたつある。言うまでもなく、ひとつはソクラテスの死、もうひとつはイエス・キリストの死である。これらの物語が西洋哲学とキリスト教の原点に位置するという事実は、人間が哲学や宗教という営みを作り出した背景に、いかにして死を克服するかという課題があったことを示唆している。人々は、死を前にしたこれらの人物の姿の中に、死のもたらす不安や恐怖を乗り越えるための知恵を見出そうとしたのである。
死にゆく者と彼をとりまく人々の織りなすドラマは、哲学や宗教をわれわれにとって一層身近で親密なものにしてきた。これらの物語の具体的な細部は、ともすれば抽象的な思弁に陥りがちな哲学や神学に、人間的な感情と確固たる実在感を与えるものである。ソクラテスの次第に冷たくなる身体と、イエス・キリストの血を流す身体、われわれはこれらの具体的なイメージを通して、いわばヨーロッパ文明の血の通った肉体に触れることができる。
われわれは同様に、死の物語を通して『フランス史』という作品の肉体に触れてみたい。おそらくは歴史もまた、哲学や宗教と同様に、人間が死を克服するために作り上げた営みにほかならない。誰も死を遁れることはできない。しかし個人は死んでも集団は生き残る。人間は自分が属する共同体の歴史の中に、死を克服する可能性を探し求めた。それゆえに死はしばしば、歴史家の重要な関心事となったのである。そしてミシュレにおいて、このことは他の誰におけるよりも真実である。 |
死の歴史学 : ミシュレ『フランス史』を読む [texte imprimé] / 真野倫平 (1965-), Auteur . - 東京 : 藤原書店 , 2008 . - 532 p. : couv. ill. en coul. ; 20 cm. - (南山大学学術叢書, ISSN 192002204800) . ISBN : 978-4-89434-613-0 bibliogr., index Langues : Japonais (jpn)
Mots-clés : |
Michelet, Jules (1798-1874) |
Résumé : |
【歴史の肉体に触れる】
本書は、ジュール・ミシュレ(1798--1874)の『フランス史』を死の物語を通して読もうとする試みである。
ヨーロッパ文明において特別に重要な死の物語がふたつある。言うまでもなく、ひとつはソクラテスの死、もうひとつはイエス・キリストの死である。これらの物語が西洋哲学とキリスト教の原点に位置するという事実は、人間が哲学や宗教という営みを作り出した背景に、いかにして死を克服するかという課題があったことを示唆している。人々は、死を前にしたこれらの人物の姿の中に、死のもたらす不安や恐怖を乗り越えるための知恵を見出そうとしたのである。
死にゆく者と彼をとりまく人々の織りなすドラマは、哲学や宗教をわれわれにとって一層身近で親密なものにしてきた。これらの物語の具体的な細部は、ともすれば抽象的な思弁に陥りがちな哲学や神学に、人間的な感情と確固たる実在感を与えるものである。ソクラテスの次第に冷たくなる身体と、イエス・キリストの血を流す身体、われわれはこれらの具体的なイメージを通して、いわばヨーロッパ文明の血の通った肉体に触れることができる。
われわれは同様に、死の物語を通して『フランス史』という作品の肉体に触れてみたい。おそらくは歴史もまた、哲学や宗教と同様に、人間が死を克服するために作り上げた営みにほかならない。誰も死を遁れることはできない。しかし個人は死んでも集団は生き残る。人間は自分が属する共同体の歴史の中に、死を克服する可能性を探し求めた。それゆえに死はしばしば、歴史家の重要な関心事となったのである。そしてミシュレにおいて、このことは他の誰におけるよりも真実である。 |
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